今回はいろいろな問題で使うことがある展開・因数分解・因数定理・解と係数の関係を扱っていきます。
内容多すぎ
実はそうでもないんだよね
展開や因数分解は中学でも扱う内容ですし因数定理はとても単純なので解と係数の関係さえ理解できれば今回の内容はクリアです。
展開?因数分解?
中学校の内容からやり直そうか
展開や因数分解の解説記事は世にあふれています。
展開・因数分解・因数定理
(1)\((x-1)(x^2+x+1)=0\) において \(x^2+x+1=0\) を満たす解の一つを \(ω\) と置くとき
\(ω^3=1, ω^2+ω+1=0\) を示せ。
(2)ある関数 \(f(x)\) に対して \(f(p)=0\) を満たすとき \(f(x)\) は\((x-p)\) を因数に持つことを示せ。
(3)\(f(x)=x^5+x^4+1\) とするとき、\(f(ω)=0\) となることを示せ。
(4)\(x^5+x^4+1\) を因数分解せよ。
解答・解説
解答(1)
問題文より \(ω\) は \(x^2+x+1=0\) の解の一つであるから \(ω^2+ω+1=0\) が成り立つ。
また、\((x-1)(x^2+x+1)=0\) の左辺を展開すると \(x^3-1\) となるから \(x^3=1\) となる。ここで、\(ω\)はこの方程式の解の一つなので \(ω^3=1\) が成り立つ。
解答(2)
関数 \(f(x)\) を \((x-p)\) で割ると
$$f(x)=(x-p)Q(x)+R$$
となる。ここで、\(f(p)=0\) より \(R=0\) を満たす。
よって、\(f(p)=0\) のとき \(f(x)\) は \((x-p)\) を因数に持つ。
解答(3)
\(\begin{align} f(ω)&=ω^5+ω^4+1\\ &=ω^3 \cdot ω^2+ω^3 \cdot ω+1 \end{align}\)
(1)の結果より \(ω^3=1、ω^2+ω+1=0\) であるから
\(f(ω)=0\) が成り立つ。
解答(4)
(2)(3)の結果より \(x^5+x^4+1\) は \(ω\) を解に持つが \(ω\) は \(x^2+x+1=0\) の解の一つであるから \(x^2+x+1=0\) を因数に持つと考えられる。
よって、\(x^5+x^4+1\) を\(x^2+x+1=0\) で割ると \((x^5+x^4+1)=(x^2+x+1)(x^3+x-1)\)
本問は初学者にはかなり難しい気がします。
特に(2)は型が決まっていないタイプの証明なので解けなくてもしょうがないですね。
(2)が今回の内容の一つである因数定理です。また、(4)は数検一級の問題ですが良問です。
因数分解単体の問題は受験において基本的に出ません。しかし、問題を解く途中過程で因数分解をすることは頻繁にあります。主に二次関数、微分、数列、整数分野で使います。
(重要)解と係数の関係
高校数学において重要な関係です。以下の問いを解いて導出してみてください。
方程式Aを
$$A:ax^{2}+bx+c=0 (a, b, c:実数 a\neq0)$$
とするとき下記の問いに答えよ。
(1)方程式\(A\)の最高次係数を1とした方程式を記せ。
(2)方程式\(A\)が\(α, β\)を解に持つとき方程式\(A\)を\(α, β, x\)を用いて表せ。
(3)(1)(2)の結果を用いて\(α+β\), \(αβ\)を\(a, b, c\)を用いて表せ。
方程式Aを
$$A:ax^{2}+bx+c=0 (a, b, c:実数 a\neq0)$$
とするとき下記の問いに答えよ。
(1)方程式\(A\)の最高次係数を1とした方程式を記せ。
(2)方程式\(A\)が\(α, β\)を解に持つとき方程式\(A\)を\(α, β, x\)を用いて表せ。
(3)(1)(2)の結果を用いて\(α+β\), \(αβ\)を\(a, b, c\)を用いて表せ。
解答
(1)\(a\neq0\)より方程式\(A\)の両辺を\(a\)で割ると
$$A:x^{2}+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}$$
(2)\(x\)が\(α\)または\(β\)の時に0となるので
\(A:(x-α)(x-β)=0\) または \(A:x^{2}-(α+β)x+αβ=0\)
(3)(1)(2)の結果より
$$x^{2}+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=(x-α)(x-β)$$
となる。右辺を展開すると\(A:x^{2}-(α+β)x+αβ\)となるから、係数比較より
$$α+β=-\frac{b}{a}$$
$$αβ=\frac{c}{a}$$
となる。
重要なのは(1)の\(a\neq0\)よりの部分ですね。記述回答ではこういうちょっとしたことも書かないと減点になるので注意しましょう。
無事に解と係数の関係は導けました。なお、解と係数の関係は二次方程式だけでなく三次方程式バージョンも時々出てきます。
ですが、導出過程は二次方程式と同様なので上記の問題が出来るのであれば計算が面倒ですが導出できると思います。下記に問題例を示すので解いてみてください。
方程式Aを
$$A:ax^{3}+bx^{2}+cx+d=0 (a, b, c, d:実数 a\neq0)$$
とするとき下記の問いに答えよ。
(1)方程式\(A\)の最高次係数を1とした方程式を記せ。
(2)方程式\(A\)が\(α, β, γ\)を解に持つとき方程式\(A\)を\(α, β, γ, x\)を用いて表せ。
(3)(1)(2)の結果を用いて\(α+β+γ\), \(αβ+βγ+γα\), \(αβγ\)を\(a, b, c\)を用いて表せ。
方程式Aを
$$A:ax^{3}+bx^{2}+cx+d=0 (a, b, c, d:実数 a\neq0)$$
とするとき下記の問いに答えよ。
(1)方程式\(A\)の最高次係数を1とした方程式を記せ。
(2)方程式\(A\)が\(α, β, γ\)を解に持つとき方程式\(A\)を\(α, β, γ, x\)を用いて表せ。
(3)(1)(2)の結果を用いて\(α+β+γ\), \(αβ+βγ+γα\), \(αβγ\)を\(a, b, c\)を用いて表せ。
解答
(1)\(a\neq0\)より方程式\(A\)の両辺を\(a\)で割ると
$$A:x^{3}+\frac{b}{a}x^{2}+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}$$
(2)\(x\)が\(α\)または\(β\)または\(γ\)の時に0となるので
\(A:(x-α)(x-β)(x-γ)=0\) または \(A:x^{3}-(α+β+γ)x^{2}+(αβ+βγ+γα)x-αβγ=0\)
\(A:(x-α)(x-β)(x-γ)=0\) または \(A:x^{3}-(α+β+γ)x^{2}+(αβ+βγ+γα)x-αβγ=0\)
(3)(1)(2)の結果より
$$x^{3}+\frac{b}{a}x^{2}+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}=(x-α)(x-β)(x-γ)$$
となる。右辺を展開すると\(A:x^{3}-(α+β+γ)x^{2}+(αβ+βγ+γα)x-αβγ\)となるから、係数比較より
$$α+β+γ=-\frac{b}{a}$$
$$αβ+βγ+γα=\frac{c}{a}$$
$$αβγ=-\frac{d}{a}$$
となる。
二次方程式の時と同様に進めれば解けると思います。
重要なのは結果ではなく導く過程です。導き方を覚えていれば結果を忘れても導出できます。
解と係数の関係も因数分解同様に単体で問題になることは基本的にありません。例として二次関数の中点を用いる問題などで使います。
練習問題
すべての係数が実数である方程式 \(A_{n}\) を下記のように定義する。
$$A_{n}:a_{n}x^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_{1}x+a_{0}=0 (a_{n}\neq0)$$
\(例えば、A_{1}=a_{1}x+a_{0}, A_{2}=a_{2}x^{2}+a_{1}x+a_{0} である。\)
\((ⅰ)まず A_{2} の場合を考える。方程式 A_{2} の2解を α, β とする。\)
\((1)α+β, αβ を a_{2}, a_{1}, a_{0} を用いて表せ。\)
\((2)(α-β)^{2}, \frac{α}{β}+\frac{β}{α} を α+β, αβ を用いて表せ。\)
\((3)a_{2}=a_{1}=a_{0}=1 のとき、(α-β)^{2}, \frac{α}{β}+\frac{β}{α} を求めよ。\)
\((ⅱ)次に A_{3} の場合を考える。方程式 A_{3} の3解を α, β, γ とする。\)
\((1)α+β+γ, αβ+βγ+γα, αβγ を a_{3}, a_{2}, a_{1}, a_{0} を用いて表せ。\)
\((2)a_{3}=a_{2}=a_{1}=a_{0}=1 のとき、α^{2}+β^{2}+γ^{2} を求めよ。\)
\((3)a_{3}=a_{2}=a_{1}=a_{0}=1 のとき、α^{3}+β^{3}+γ^{3} を求めよ。\)
すべての係数が実数である方程式 \(A_{n}\) を下記のように定義する。
$$A_{n}:a_{n}x^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_{1}x+a_{0}=0 (a_{n}\neq0)$$
\(例えば、A_{1}=a_{1}x+a_{0}, A_{2}=a_{2}x^{2}+a_{1}x+a_{0} である。\)
\((ⅰ)まず A_{2} の場合を考える。方程式 A_{2} の2解を α, β とする。\)
\((1)α+β, αβ を a_{2}, a_{1}, a_{0} を用いて表せ。\)
\((2)(α-β)^{2}, \frac{α}{β}+\frac{β}{α} を α+β, αβ を用いて表せ。\)
\((3)a_{2}=a_{1}=a_{0}=1 のとき、(α-β)^{2}, \frac{α}{β}+\frac{β}{α} を求めよ。\)
\((ⅱ)次に A_{3} の場合を考える。方程式 A_{3} の3解を α, β, γ とする。\)
\((1)α+β+γ, αβ+βγ+γα, αβγ を a_{3}, a_{2}, a_{1}, a_{0} を用いて表せ。\)
\((2)a_{3}=a_{2}=a_{1}=a_{0}=1 のとき、α^{2}+β^{2}+γ^{2} を求めよ。\)
\((3)a_{3}=a_{2}=a_{1}=a_{0}=1 のとき、α^{3}+β^{3}+γ^{3} を求めよ。\)
解答
(ⅰ)(1)解と係数の関係から
$$α+β=-\frac{a_{1}}{a_{2}}$$
$$αβ=\frac{a_{0}}{a_{2}}$$
(ⅰ)(2)\((α-β)^{2}=α^{2}-2αβ+β^{2}\), \((α+β)^{2}=α^{2}+2αβ+β^{2}\)より
$$(α-β)^{2}=(α+β)^{2}-4αβ$$
また、\(\frac{α}{β}+\frac{β}{α}=\frac{α^{2}+β^{2}}{αβ}\), \(α^{2}+β^{2}=(α+β)^{2}-2αβ\)より
$$\frac{α}{β}+\frac{β}{α}=\frac{(α+β)^{2}-2αβ}{αβ}$$
(ⅰ)(3)\(a_{2}=a_{1}=a_{0}=1\)のとき\(A_{2}=x^{2}+x+1\)より(1)の結果より
$$α+β=-1$$
$$αβ=1$$
である。(2)の結果を用いると
$$(α-β)^{2}=(-1)^{2}-4・1=-3$$
$$\frac{α}{β}+\frac{β}{α}=\frac{(-1)^{2}-2・1}{1}=-1$$
(ⅱ)(1)
解と係数の関係から
$$α+β+γ=-\frac{a_{2}}{a_{3}}$$
$$αβ+βγ+γα=\frac{a_{1}}{a_{3}}$$
$$αβγ=-\frac{a_{0}}{a_{3}}$$
(ⅱ)(2)\(a_{3}=a_{2}=a_{1}=a_{0}=1\)のとき、\(A_{3}=x^{3}+x^{2}+x+1\)より(1)の結果より
$$α+β+γ=-1$$
$$αβ+βγ+γα=1$$
$$αβγ=-1$$
である。
また、
$$(α+β+γ)^{2}=α^{2}+β^{2}+γ^{2}+2(αβ+βγ+γα)$$
より
$$α^{2}+β^{2}+γ^{2}=(α+β+γ)^{2}-2(αβ+βγ+γα)$$
であるから
$$α^{2}+β^{2}+γ^{2}=(-1)^{2}-2・1=-1$$
(ⅱ)(3)$$α^{3}+β^{3}+γ^{3}-3αβγ=(α+β+γ)(α^{2}+β^{2}+γ^{2}-(αβ+βγ+γα))$$
より
$$α^{3}+β^{3}+γ^{3}=(α+β+γ)(α^{2}+β^{2}+γ^{2}-(αβ+βγ+γα))+3αβγ$$
となるから、(2)の結果より
$$α^{3}+β^{3}+γ^{3}=(-1)(-1-(1))+3(-1)=-1$$
今回の内容をまとめた融合問題です。余談ですが本問題では直接的に解を求めようとすると虚数が出てくるようになってます。
次回は高校数学において最重要事項である関数の初歩である二次関数を扱います。
コメント